有名なローマのコロッセオに匹敵する円形闘技場が、地中海を挟んで反対側のチュニジアにある。2010年、行ってみた。

 エル・ジェムに入る道は、砂漠とオリーブ畑(?)の中をひたすら走る。闘技場が造られた3世紀初めごろ、この周辺はオリーブで栄えていたというから、歴史は古い。オリーブの木は1本1本がけっこう離れて植えられている。実を落として拾いやすいから?「オリーブの木は根が横に広がるので、間隔を開けています」とガイド。退屈な風景が、ぽつんぽつんと家が増え街らしくなってきたころに「前に見えてきました」とガイドが指を差す。石積みの闘技場の壁が見えてきた。

石積みの闘技場の壁が見えてきた
石積みの闘技場の壁が見えてきた

 街の中にドーンと建っている。入る前に腹ごしらえで入ったレストランのオープンテラス…といっても道路にテーブルを並べているだけだが…からも闘技場が見える。周辺にビルなどの高い建て物がないので、この街の宝をどこからでも見える仕組みになっているようだ。さすが、イタリア以外では最大のローマ時代の遺跡だけのことはある。

街の中にドーンと建っていた
街の中にドーンと建っていた

 入り口に立つと、大きさを実感する。高さ36メートル、だ円形で長径149メートル、短径124メートル、3万5000人収容。ローマのコロッセオ(4万5000人収容)より一回り小さいが、後世の建築物を造る「石切り場」になったコロッセオに比べて、保存状態は格段に優れているという。ローマより1年早く世界遺産に登録されたのもそんな理由なのだろうか。カルタゴを滅ぼしたローマ帝国の、アフリカ総督だったゴルディアヌス帝が230~238年に建てたとされ、未完成だったらしい。

高さ36㍍、長径149㍍、短径124㍍で3万5000人収容だ
高さ36㍍、長径149㍍、短径124㍍で3万5000人収容だ

3層の外壁は一部崩れているが、これは7世紀末に先住民ベルベル人とイスラム勢力の最後の戦いの舞台になった時に壊されたという。内部に入ると、さらに大きさを実感する。内壁に囲まれた競技場部分(アリーナ)は長径65メートル、短径40メートル。積み上げられた石の大きさを見ると、その頑丈さにも納得する。

内部に入ると、さらに大きさを実感する
内部に入ると、さらに大きさを実感する
競技場部分(アリーナ)は長径65メートル、短径40メートルだ
競技場部分(アリーナ)は長径65メートル、短径40メートルだ
ローマのコロッセオに比べて、保存状態は格段に優れている
ローマのコロッセオに比べて、保存状態は格段に優れている

かつての石積みが残っているのは外壁と通路などで、観客席は崩れているところが多く、新たにつくられている。いまもここでコンサートなどを開いている。1800年近くたっても現役。その外壁や通路は、内側から見るとアーチを多用した見事な造りになっている。崩されてしまったところの方がアーチの連なりがよく分かって、なぜか美しく見える

外壁や通路は、内側から見るとアーチを多用した見事な造りだ
外壁や通路は、内側から見るとアーチを多用した見事な造りだ
今もここでコンサートが開かれており、1800年経っても現役
今もここでコンサートが開かれており、1800年経っても現役
観客席は崩れているところが多く、新たにつくられたもの
観客席は崩れているところが多く、新たにつくられたもの

 ローマのコロッセオ内部は崩壊が激しいのでいろいろ歩き回れなかったが、こちらは修復している場所をのぞいてほとんどフリー。3層目まで階段で上がることができる。日差しを受けると、石積みがくっきりと分かる。世界遺産の中をこんなに歩き回っていいものかとは思ったが、そこは頑丈さゆえのことなのだろう。

3層目まで階段で上がることが可能だ
3層目まで階段で上がることが可能だ
日差しを受けると、石積みがくっきりと分かる
日差しを受けると、石積みがくっきりと分かる

新しくつくられた客席で一服していると、「地下にも行ってみましょう」とガイドと下へ。地下にはトンネルや部屋がいくつもあり、「これが昔のエレベーターです」と、アリーナへ上がる縦穴を示した。「ここから剣闘士や、ライオン、トラなどの猛獣を地面に登場させていたといいます」とガイドは説明した。ローマのコロッセオにもある仕掛けが、遠く離れたアフリカの地にもある。闘技場の収容人員は当時の街の人口よりかなり多かったという。人対人、人対猛獣の「ショー」が当時の人たちをひきつけ、広範囲から集まってきていたのだろう。

アリーナへ上がる縦穴が見えた
アリーナへ上がる縦穴が見えた
通路にもアーチが…
通路にもアーチが…

◇食べてみました◇

 世界最小のパスタと呼ばれている「クスクス」。主に北アフリカの料理として有名で、チュニジアでも一般的な料理。カウターさんの弟モハメドさん、ファティマさん夫妻宅でごちそうになった。小麦粉を小さな粒状にしたものを蒸すそうで、メディナなどでも日本の蒸し器に似た「クスクス鍋」を売っていた。2つのなべが縦に合わさっており、下の鍋でソース(スープ)をつくりながらその水蒸気で上の鍋の中の具材を蒸すのだという。

日本の蒸し器に似た「クスクス鍋」
日本の蒸し器に似た「クスクス鍋」

パスタだけに、具はさまざまあるそうで、食べたのは魚のクスクス。ボラのような30~40センチぐらいの魚のぶつ切りと大きなピーマンがクスクスの上にのっていた。魚をほぐしてクスクスと一緒に食べる。クスクス自体にも微妙な味付けがしてあった。最小のパスタながら食べごたえがあり、魚ひと切れ分で十分満足した。

魚のクスクス
魚のクスクス